zakkan 甚佐紅(ざっかん じんざもみ)

日々の雑感を綴ってみたい・・・。

いくら何でもキミ、それは無謀だよ・・・。

また、雪が降りました。


リサイクルの瓶や缶を出す日。
先月76歳になった夫は、一輪車に、酒の瓶とビールの缶を山のように積んで、雪の中、ごみ集積所に運び、「汗かいちゃったよ」と言いながら帰ってきました。


2020年6月。
海を見ながらいつものように夕ご飯を食べていました。
暮れなずむ瀬戸内海。明石海峡大橋の下を貨物船がゆったりと通り過ぎ、右には、明石コーストの灯りがきらめき始めていました。


神戸元町で、人形の着物や人間の着物、お客様のニーズに合わせて、和装用品を誂える店を営んで7年。やっと軌道に乗った、といえる頃でした。


昭和5年生まれの市松人形の着物を、新しく仕立て直して着せ替え、ニューヨークに送ったり、クルーズ船でやってきた世界中の観光客に、帯を加工したテーブルランナーを買ってもらったり、それなりに愉しい日を送っていたのですが。


19年から徐々に拡大していったパンデミック。


私が唐突に言いました。
「山羊を飼いたいんだけど」


何を言っているのか全く分からない、という顔で夫は私を見ました。


「お店はもう持たないと思う」
うちの店の裏側に位置する南京町は、混雑でうねるように歩く人の群れ、が一変して、午後5時、誰一人ひとのいないゴーストタウンになっていました。
表の元町通だって、夏になろうというのに、表情のよくわからないマスクの人が寒々しくほんの少し歩いているだけ。


「山羊のお乳が飲みたいのよ」
「それは、買えないの?通販かなにかで」


夫は、2012年に盛岡から引っ越してきた、釣竿を投げれば届きそうなくらい海の近い中古の集合住宅を気に入っていて、「ここで死ぬんだ」といつも言っていました。
駅まで歩いて3分。元町まで電車で20分。
きれいに整備された道を、自転車を連ねて、二人でよく走っていました。


突然、山羊を飼いたい、などと言い出す妻に、
「いくら何でも、それはキミ、無謀だよ」


でもいま、私たちは山羊を飼って暮らしています。


残念ながらお乳を出してくれないので、近くの集落から山羊乳を届けてもらっています。
1リットル500円。72℃ 30分の殺菌で、うちに届いたときはまだ熱いくらい。
美味しく頂いています。

今朝の山羊小屋です。


山羊は高地の断崖が原産とされている、寒さにとても強い動物で、雪や氷はへっちゃらです。
朝6時。チモシーと燕麦の朝ご飯を食べたら、散歩です。


夏はそこら辺の草をバクバク食べていますが、今は樹木の皮や、けなげに顔を出したタンポポやシロツメクサの若い芽をたちどころにむしって口に入れています。


去年の夏、朝の散歩で出会った男の方、
「でっかい犬連れてはる思たら、山羊やった」とびっくりされたのですが、淡路島の方で、それ以来、よく遊びにいらしています。


夫は、というと。
夏は草刈りおじ。冬は薪割りと薪ストーブの守り。


愉しいなあ、と申しております。
ほんとかなあ・・・。