zakkan 甚佐紅(ざっかん じんざもみ)

日々の雑感を綴ってみたい・・・。

車夫馬丁になりたいのか、お前は。

着物生地で、ブラウスを縫っています。
好きなことのできる毎日。


一昨日、近所の保育園で卒園式がありました。
仲良くしているお嬢さんとお母さんがやってきて、
「無事卒園出来ました!」
とのご報告。
よかったね、と言いながら
20年後、彼女はどんな人生を歩んでいるのか・・・。


息子には宮大工になってもらいたかった。


中学を出たら、しかるべきところに弟子入りして、素晴らしい大工さんになってほしい、とわたしは一人で夢想していたのでしたが、息子は高校教師になってしまい、今では、早期退職してオーストラリアに行ってプータローになる、などと年中愚痴っております。


職業を選ぶ。


55年前のこと。
高校二年の春、私は衝撃を受けました。
四年制大学を出た女は就職できない、と新聞に書いてあったからです。


職場の花、そして、男性社員の良い妻になる候補として女性社員は存在する。
良妻賢母こそが唯一、女のできることです、と聞いたのはその10年後。
大きな会社の人事部長をつとめ、専務さんになっていらしたその方は、こうもおっしゃいました。


僕が入れた女の子はみんな売れましたよ。きれいで可愛らしいのばかり選びましたから。
親御さんのしっかりした管理のもと、女子短大を出て、年長者の教えに従い、家の外に7人の敵がいる男を家庭でくつろがせ、子供を産み育てるのが女の務め。
地方出身者で下宿なんぞして大学に通っているような若い女には、どんな虫がついているかわかったもんじゃありませんからね。


わたしは結局大学へ行きませんでした。


夫は、航空機のパイロットになりたいと思っていた中学の頃、父親にそう話すと、
「車夫馬丁になりたいのか、お前は」と言われたのだそうです。


パイロットは確かに定期運航が業務ですから、運転手には違いないのですが。


で、夫は、コンピューターやATMを開発するいわゆる「作る仕事」についたわけです。
義父は大いに満足だったのですって。



移住してから、畑にグリンピースを植えよう!とわたしが提案したところ、
ふうん。
まず土壌を作るには、どんな肥料が必要かしらね?
さあ。
油粕とか、苦土石灰と書いてあったけど。
わからないなあ。


全く反応してくれず・・・。


しかし。
つい最近、二匹の犬にピントが合ったり、ぼやけたりするスマートフォンの画面のTVコマーシャルを見て、なんでこんなことできるんだろう、と感心しきりのわたしに、


簡単だよ、画面はすべてドットで構成されているのだから。
一つ一つの点の、色や明るさを調整することで、くっきり見える犬になったり、ぼやかされてしまったり。
数千万あるドットの間をちょいちょいと操作すれば、なんだってできるのさ。


農業にはまるで関心がないくせに、長年研究の対象だったコンピューター関連の話になると、立て板に水、です。
とは言いながら、最近のPCの中はさっぱりわからないそうですが。


さて。
三十数年前の正絹着尺。
伝統的な柄である桧垣(ひがき)が織り出された美しい綸子の白生地。
その上に広がる和傘の、なんてたくさん。
驚いたことに、てっぺんに貼られた和紙まで、丸い点の大小だけで描かれているのです。


先見の明?
全然関係ない、ですか。


ただ、夫が、好きな職業に就いていたことだけは確かなようです。